トイレに行っトイレ

18:00頃、パーンッと会社を飛び出してみると、外が明るい。

「日が長くなったなぁ。」

とポツリと呟き、家路についた。

 

コンビニやデパートなど公衆気味のトイレで大きい方の用を足すときというのは、ドキドキとがっかり、よっしゃ!の感情がハッキリと別れる。

まず、最初の関門はトイレの個室が空いているかどうか。ドアの鍵が赤い時のがっかり、青い時のよっしゃ!感。

恐る恐るドアを開けて、そーっと息を吸う。前使用者の残り香がコッテリ残っていたら最悪。無臭だったときのよっしゃ!感。微妙に匂いが残っている時は微妙な気分。

以前、コンビニのトイレで鍵が青いのを確認して、ドアを開けたら、おっちゃんが普通に用を足していて面喰らったことがある。鍵が青で開いている時でも外のトイレは注意が必要である。

 

いざ、用を足さん!と便座に座る前に便座を軽く目視。除菌クリーナーがあれば、ささっと便座を磨く。

ここらでようやくズボンとパンツをおろし、ついでに腰もおろし、ふんっ!と力む自分。と、そこへドアを開けようとする人の気配、ガチャガチャという緊張の音。

「外で人が待っている…!」

こう思ったが最後、早くしなくてはという焦りが、それまでお腹にあると感じていた大便の気配および便意を見失ってしまい、自分はここで何してるんだ?という気持ちに。

何となく勿体無く思い、ウォシュレットで尻だけ濡らしてとっとと出よう、と思ったら!ウォシュレットの刺激のおかげで見失っていた大便・便意が再び現れ、試合再開。

「待っている人の尻のことまで責任持てるか」

と横柄な態度になる自分。

他人の尻よりもやはり自分の尻が可愛い。

現れては消え、また現れるという霞のような便意をウォシュレットの刺激を小まめに活用しつつどうにかこうにか大便の形だけは整えることができた自分。腸が空っぽ、という理想状態には程遠く、腹の中に何かある感じはあるが、まぁ及第点でしょう、とここで試合終了。

自分は便を出した瞬間、即座に水洗することで、個室内に匂いが充満しないようにしているので、割かし匂いは残さない方であると思う。便が肛門から出るときのヘンテコな音もかき消せるし、良いと思う。

 

腰を上げ、パンツ、ズボンを履き、手を洗い、ドアを開ける。

ドアの外では若い頃の三船敏郎みたく野獣の目付きをした兄ちゃんが待っていた。自分は頭を下げたか下げてないかギリギリの動作を無意識に繰り出す。あれは頭下げてたよ、いや頭下げてなかったよ、と人々の意見が別れる玉虫色の動作である。「待たせてすんません」という懺悔の気持ちと、「謝るくらいならとっとと出ろよ」と思われるかも、とか色々な自己解釈、自己弁護が渦巻き、玉虫色の動作に至った。

とにかく一仕事終えたかの如くにこやかな足取りの自分。さっきまで下半身丸出しでウーウー力んでいたとはおくびにも見せずに。

 

こういう微妙なやり取りを自分はほぼ毎日している。今後も予想外の出来事がトイレ界隈で起こるかもしれない。しかし、恐れていてはいけない。快適な脱糞するために、発奮する必要があるのである。